安寿の本棚

□ 陵辱涙 猫科の愛玩動物 (完結) □

6 面変わりして




陵辱涙6 表紙

第六章 面変わりして




「まだ、触られているような気がする?」
「……うん」
 問いかけられて、義也は小さくそう頷いた。ほとんど声にはならなかった。
 体中に打ち込まれた三十個のピアス。
 肌を穿つ瞬間にはぞくりと背筋を震わせていたのに、今はひとつひとつのピアスが、まるで押し当てられた火のようだ。
「誰に?」
 そんないじわるな問いかけに、答えられるわけはなかった。佐竹の名なんか……口にするのも厭だ。
「まるで、彼に恋でもしているようだね」
 そして神代もまた、佐竹の名を口にしない。
「そ……そんなこと、あるわけねえだろっ!」
 かすれた声を張り上げる。
 最後に足指のあいだに打ち込まれたピアスだけが、他のピアスとは別の意味を持っている。その存在感が振り捨てたくなるほどに煩わしい。
 神代が舌を捩じ込んだときに塗りつけられた唾液が、まだ指のあいだにはぬるぬるとわだかまっていた。
 それが、たまらなく不快だった。
 だが淫猥な椅子に縛り付けられて手足の動きを封じられている義也に、できることなど何もない。ただその不快な感触に甘んじるしかないのだ。
「そんな口のききかたは頂けないね」
 神代が言った。
 拗ねてそっぽを向いた義也を叱っているのとも違う。義也の気持ちををつつきまわすことを、ただ愉しんでいる……せせら笑うような口調。
 見下ろしている神代の表情は穏やかだったけれど、その向こう側にあるのは佐竹やその舎弟たちと同じ……支配的な性の行為への欲望だけだ。
「どこが疼いている?」
 そして神代は、さらに義也を追い詰めたいらしい。
 佐竹が触れた場所で、ピアスを施すことができずに残ったのはたった一箇所だけだ。だがそれがどこかなんて、言えるわけはなかった。そんな場所が、まるで佐竹を恋しがっているみたいに疼いているなんて認めたくない。
 悔しさと恥ずかしさで今にも泣き出しそうになっているのが、表情にも現れているのだろう。その義也の表情のこわばりを見て、神代は、くす……っと笑いを漏らした。まるで、そうして口ごもっていることが、明確にその部位の名を口にするよりも上出来だと言いたげだ。
 神代の手が押し開かれた義也の足のあいだを撫でるように探った。
「……っ!」
 足を大きく開かれて椅子に拘束されていたから、本来なら双丘の奥に隠されるべき蕾も無防備にさらけ出されている。
 神代の指がその縁をなぞった瞬間に、義也は体を何か得体の知れない、どす黒い塊が体を突き抜けていく衝撃を感じていた
 神代の指先のひんやりと滑らかな感触。
 だがもうその滑らかさを、心地良いなどとは思えなかった。佐竹が振り回した竹刀や、ぐいぐいと押し付けてきた欲望の猛りと同じ……暴力の手触りだ。
「…………」
 ぐっと力を込めて瞼を閉じた。
 水に潜るときと同じように呼吸も堪える。
 そうして呼吸を押しとどめると、耳に届く音までもが変わってしまう。
「ここに欲しいのは、ピアスじゃないんだろう?」
 神代の囁きも、まるで水の中に響く呼びかけみたいにくぐもっている。音声そのものが質量を持ち、頭蓋の中に潜りこんでぶよぶよと膨らんでいくような不快さだ。

 神代の手で、体の奥にたっぷりとローションを流し込まれた。金平糖みたいな形の、コブだらけのボールが数珠つなぎになった性具を義也の体に押しこんでいく。
「……んん……っ、ぁっ」
 必死に堪えていたのに、苦痛のあまりそう声が漏れた。
 同じような性具を佐竹にも使われたが、似ているのは形だけだった。
 佐竹はまだ牡を受け入れることに不馴れな義也の体を押し開くために性具を使っていたのだろう。義也が性の行為に馴染んで以降は、そんなものの存在など忘れてしまっていたようだった。
 だが神代は違う。はっきりと苦痛を与えることを意図し、その性具を使うことを好んでいるのだ。
「ひとつずつ、出してごらん?」
 そう命じられて、義也は従った。その行為を屈辱的だと思う気持ちが、どこか麻痺し始めているのを感じる。
 正面の壁を覆う鏡。
 そこに映っている顔が、見知らぬ誰かなのだと思えてならない。
 瞼にも、唇にもピアスを打ち込んだ顔。
 じっと睨んでいるその目付きさえ、以前とは違ってしまっている。
 不意に、義也は口を開けた自分の顔を確かめたい衝動に駆られた。そうすれば先端から奥に向かって舌の上に一列に並ぶ三個のピアスが見えるはずだ。義也は投げ出されていた写真の通りに、自らの舌にもピアスを打ち込んだのだ。それが口を使って男を悦ばせるための配置であることを、義也はようやく理解する。
 その淫らな印を刻んだ舌を出して牡を舐めるときに、自分は一体どんな顔をするのだろう。
 椅子に縛り付けられた体勢で体外に押し出すのは容易ではなかったが、そんなことはさっさとそれを済ませてしまいたかった。
 抗ったところで……神代がその行為を免除してくれるとは思えない。息苦しいのも構わずに力み、体をよじって歪な連なりを排出する。
「せっかちだな、きみは……」
 神代の、不満そうな声が浴びせかけられる。
「もっとゆっくりだよ」
 そう言って、神代はローションでどろどろになった性具を手にとった。そしてもう一度、それを義也の体へと押しこんでいく。
「もう一度だ。この可愛い窄まりで、出て行くボールを数えるんだよ。一、二、三……そんな数えかたじゃダメだ。分かるだろう? ひと――――――つ、ふた――――――つ、み――――――っつ、そうやって、味わうように数えるんだ」
 小さな子供に数の数え方を教えるような口調。そこにかすかな狂気が潜んでいる。
「もう一度」
「もっとゆっくりだよ」
「それじゃだめだ」
「上手にできるまで終わらないよ」
「もう一度だ」
 何度繰り返しても神代は満足しなかった。気が遠くなるまで、それを繰り返さすことを要求される。
 泣きながら、義也はそれに従っていた。
「もう厭だ」
「赦して……」
 そう何度も懇願したけれど、神代は表情を変えることさえしなかった。
 途中で一度、潤滑剤を継ぎ足された。
 そのことは覚えている。
 だが次第に、何をしているのか分からなくなりはじめていた。鏡に写った自分の、目を背けたくなるような無様な姿を呆然と見つめながら、ただ神代の手で体内に送り込まれていく性具を数えている。
 その手の動きにあわせて腰を上下させると、苦痛をさほど感じずに済むのだと分かってくる。
 そしてわずかにだが、心地良さを感じることも……。
「もっと奥に……欲しい」
 がくがくと体が震え始めていることを自覚しながら、義也はかすれる声でそうせがんでいた。
 神代の使う性具では、決してそこには届かない。
 佐竹が突きまくった場所。
 今も疼き続けているのは……そこだ。
「硬いので、――で、奥まで突いて……? そこに欲しいから……だから……」
 性器の卑猥な俗称を自ら口にすることにも、もはや抵抗する気持ちを失っていた。
(媚びて、何が悪い? どうせ俺は……こうやって男にすがるように生まれついているのに。男にヤられることが好きで好きで堪らない……最低のクソ野郎なのに)
「俺のいやらしい お 尻 に、挿 れ て……」
 その場所を責められれば意識が白く飛んで、つかの間、何もかもから解放される。そのことをもう、義也の体は覚えてしまっていた。




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Date:2011/03/30
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UserTag: BL小説  18禁  須藤安寿 
Thema:自作BL連載小説
Janre:小説・文学

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