安寿の本棚

□ 罪の書 青の記憶を綴って □

1 序章

罪の書 表紙

 この書は、すべて暗号によって綴るつもりだ。
 内容を読み解くのは容易ではあるまい。この暗号は私が(つまりザンクト・ホルストのヤン、または小さきジャンと呼ばれた暗号筆記係修道僧が)独自に考え、誰にも読み解く術を明かすことなく墓まで持って行くつもりのものだからだ。
 罪に彩られた私の半生を綴るには、それがもっともふさわしいだろうと思える。

 それでもこの書が失われることなく保管される限り(書物は時として、いとも簡単に失われる。焼かれることで、埋められることで、そして単に、忘却によっても)、いずれは誰かが暗号を読み解く術を見つけ出す可能性もまた失われることはないということになる。永遠に解かれね暗号など存在ないし、永遠に読み解かれることを期待せずに綴られる暗号もまた存在しないだろうから。

 私はこの書に暗号を綴る行為をもってすべての罪を告白するが、いずれこの暗号を読み解く者を聴罪僧に仕立て上げるつもりは毛頭ない。
 この暗号と同じように、私の犯した罪もまた、私だけのものだ。
 滑らかな手触り、舌や喉を蕩かせる味わい、艶を放つ色彩、芳しい香り、耳朶をくすぐる囁き。サローという、妖しくも美しい異端の修道僧が私に与えてくれた甘美な疼きと痛みとのすべて……。
 やがてこの生命が尽きるときには、そのすべてを抱いて地獄の業火に灼かれよう。神の救いも、赦しも、もはや私には不要のものだ。

 この書を残すのはただ、祈りのようなもの。私の遺すことのできる儚い足跡のようなものに過ぎない。

 まだいかなる文書もこの暗号で綴ったことはないし、この書を書き上げたのちに再び使うこともないだろう。だから暗号に名を与えることになどおそらく意味はあるまい。


 ――だが、私はこの暗号を〈青の記憶〉と呼ぼう。




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Date:2011/03/25
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UserTag: *  BL小説  18禁  須藤安寿 
Thema:自作BL連載小説
Janre:小説・文学

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