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03/25のツイートまとめ

anjusuto

@_molica_ 先生の野望はやはり「18禁的」展開でしょうw 大人ですし(笑)。
03-25 23:33

@_molica_ ありがとうございます(^^)。非18禁のじれったいBLをやることが、だんだん心地良くなってきた今日この頃ですw
03-25 23:18

@senbei_neko さんからのアドバイスを活かすべく、果敢にチャレンジ(笑)。ブログ更新しました>>>「コミPo!で描いてみた/いい夢見られるおまじない(?)」 http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10841380573.html
03-25 23:08

ふっ、この男前な女子力で癒してやるぜぃっ!>>>須藤安寿の診断結果【女子力■■■■■ 男前度■■■■■ 恋愛技術□□□□□ 癒し力■■■■■】 http://shindanmaker.com/70404 #s_tr  ……って恋愛技術皆無かいorz。
03-25 19:57

ふと見たら(<要するに忘れていた)FC2のブログに、昨日設定したtwitterのまとめがキチンとUPされていた(感動)。TLはそれなりに追っていてもあまり発言してなかったのけど、これからは日記的な意味でもtweetを増やしていこうと思います。
03-25 18:28

@senbei_neko コミPo!で作ってみようかしらwww>枕の下用カップリング絵&台本
03-25 18:26

@senbei_neko 良い夢といえば、やっぱり♂×♂でめくるめく官能のひとときを覗き見るような夢かな……って思うんですけど、案外そういう夢は見ないですね?(^^;。<起きてるあいだに妄想しすぎ?
03-25 16:45

なんだかんだと徹夜で作業してしまった。着る毛布にくるまっていたけど、暖房なしだったからさすがに冷え冷え?。そろそろひと眠りしようと思います。おやすみなさーい&出勤のみなさま、いってらっしゃいませ(??ω??) ノシ?
03-25 08:02

ブログ更新しました>>>「コミPo!版・新ブログ「安寿の本棚」告知」 http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10840626632.html
03-25 07:57

3 黙(もだ)せる顔の




陵辱涙3 表紙

第三章 黙(もだ)せる顔の




 神代の手がゆっくりと脇腹を撫で下ろしていく。そのくすぐったさを、義也はぼんやりと感じ取っていた。まるで頭の中に白い靄が立ち込めたように、すべての出来事が遠く感じられている。
 だがその指が、義也の着ている安っぽいハーフパンツにかけられたとき、びくり……と体が震えた。
 そのハーフパンツはヤクザの事務所に連れて行かれたあとに与えられたものだった。さっき脱がされたシャツも同じだ。おそらく若い組員の着古しかなにかだろう。与えられたときにはすでに薄汚れてあちこちほつれていたし、サイズも義也には大きすぎた。ハーフパンツとシャツの組み合わせも、どこかちぐはぐで不恰好だった。
 だがそんなこと、義也のほかには誰も気にはしなかった。どうせあいつらは義也に服を着せることになど、何の興味も持っていなかったのだから……。
 臍の間近で片蝶結びになっていた紐が解かれると、ハーフパンツの緩すぎるゴムのウェストは容易く腰からずり落ちてしまう。
 その瞬間、義也の脳裏にひとつの光景が蘇った。白い靄が唐突に晴れて、現実に引き戻される。
「……や、やだ。だめ……!」
 義也は慌てて神代の手を止めた。
 今さら、そんな懇願が聞き入れられるとは思わなかったし、すでにハーフパンツは腰の下まで引き下ろされている。だが、シャツを脱がされたときのように漫然とその状況を受け入れることはできなかった。
「ふ……っ」
 そう、かすかに神代が笑いをもらした。
 すでに半ば脱がされかかったハーフパンツの下で、じっとりと濡れて肌に貼りつく小さな布地。目を射るようなどぎついショッキングピンクのGストリングを、神代の目が興味深げに見下ろしている。
「女の下着が好きかい?」
 耳朶を舐めるようなささやき。神代が喉を鳴らして唾を飲むその音が、鼓膜を震わせる。耳の中にだらだらと唾液を流し込まれたような気がした。
「ち……ちが……」
 そう必死で否定する声が震える。
 その一方で、こんなものを身につけているヤツを、嘲笑したくなるのは当然だ……とも思った。
「違うって、何が?」
「これは、あいつが……あいつらが無理矢理……」
「ふふ……。ああ、そうだね、こんな下着を身につけることなんて、きみは考えつきもしなかっただろう。でも……嬉しいプレゼントだったんじゃないのかい? こんないやらしい下着をつけて、あの男たちを誘ったんだろう?」
「ち、が……う……違う、違うっ!」
 そう叫んで、義也はハーフパンツを引きずり上げた。その屈辱的な下着を、自らの視界からも、神代の視界からも覆い隠したかった。
 それで何かが変わるわけじゃない。
 どぎつい色の下着や、辱められた記憶が消えてくれるわけでもない。
(そんなこと……分かってる)
 だがこんなものを身につけた自分の姿をさらしていることに、これ以上、一秒だって堪えられなかった。

 この下着を義也につけさせたときの、男たちの嘲りの声が耳の奥にはまだこびりついている。それを再び神代の目にさらされて、義也は恥ずかしさと悔しさで圧し潰されてしまいそうだった。
 そこは萎えたままだったが、毒々しい色の布地は窮屈そうに盛りあがっていた。履きこみの浅い女物の下着に収まりきるわけもなく、牡の先端が下腹に押しつけられて顔をのぞかせていた。
『ほら、踊れよ。色っぽく腰をくねらせて、くるくる回ってみせろ』
 その無様な姿のどこがどう気に入ったのかは分からない。だが代行と呼ばれたあの男は、義也にその下着をつけさせてご満悦だった。
 踊れと言われても、義也にはどうすればいいのか見当もつかなかった。それに、あのときは両腕が後ろ手に縛り上げられて、満足に身動きさえできない状態だったのだ。何もできはしなかった。ただ男たちに眺め回されながら棒立ちになっていただけだ。
『役立たずな小僧だな。教えてやらなきゃケツの振り方も分からないのか?』
 罵声と共に竹刀が打ち下ろされた。義也が倒れるたびに髪を掴んで引きずり起こし、竹刀を叩きつける。起き上がることも出来なくなるまでそれが続き、義也は床に四つん這いにさせられた。
 竹刀で小突かれて、命じられるままに腰を上げる。きつい下着に性器が締め上げられ、尻の丸みのはざまにも、ぎりぎりと紐が食い込んでいた。
『叩かれるとイイのか? それとも犬っころみたいに這いつくばってケツを突き出すのと感じるのか? そんなに――をぶち込まれるのが好きか』
 代行と呼ばれた男はそう言うと、竹刀を投げ捨てて義也の腰を抱え込んだ。尻のはざまに食い込む紐を掴んでずらし、震える蕾にいきなり剛直を突き立てる。
 激痛に義也が声を上げ、身をよじるたびに、男は激しく腰を揺さぶった。
 そうされると、息が詰まりそうな苦痛に襲われる。義也はこの男とヤるのが、一番嫌いだった。
 乱暴だからとか、大きすぎるからとか……そんな単純な理由ではない。他の連中に比べるとその行為もうんざりするほど長く続いたが、それさえも理由とは言えなかった。嫌悪感を抱くのは、この男がどうすればより的確に義也を傷めつけられるかを熟知していて、それを愉しんでいるからだ。
「う……ああ、たまんねえな。無愛想でまるっきり可愛げもないくせに、ココだけは極上品だ」
 男の口からもれる、熱っぽくあとを引く低い呻き。それが、義也の体で味わう快楽の深さを示すように次第にあたりはばからぬものになっていく。あの声を聞かされるとき、義也はいつも切り裂かれるような痛みを味わっていた。
『あっ、ああ……っ! もう厭……。厭……だ。もう……やめて、お願い、お願いだから……』
 何度目になるのかも分からない男との交合だった。
 注ぎ込まれた潤滑剤や精液で、そこはずっとぬるついたままだ。それなのに、窄まりを押し広げられる痛みも最奥まで抉られる苦しさも、一向に和らぐことはなかった。
『すぐに馴れて、よくなる』
『これがイイんだろ? 後ろがびくびくしてるぜ』
 この半月のあいだ、男たちはそう繰り返していた。でもそんなことは嘘だ。義也の体はいつまでも強ばって、男たちを拒むばかりだったのだから。
(あと何度かこれを繰り返せば何かが変わるなんて、あり得ない。殴られたり、突っ込まれたりしてイケるわけねえよ。こいつらに可愛がられたいって思うようになる? 薄汚い――を舐めたくなるとか? 馬鹿くせえ。そんなことあるわけないじゃないか……っ!)

「そんな汚れた、いやらしい下着をずっと穿いているつもりかい? 体をきれいに洗って、別の服を着たほうがずっといいだろう。……厭かい? 奥の部屋には風呂もあるし、服も用意してあるんだよ。きみのような子が、ここにはよく連れてこられるからね。売女の下着なんかじゃない、ちゃんとした男の服がある」
「……男の……服?」
 神代の言葉をなぞってそう尋ね返す。ハーフパンツを引き上げていた指先から、ふ……っと力が抜けた。
「――私に、脱がせて欲しいんだね?」
 了承の返事として十分な手応えだったのだろう。
 神代は形ばかりの質問を繰り返してはいたけれど、もうそれ以上、義也の言葉を待つつもりはないらしい。
 義也も、神代の動きを阻もうとはしなかった。じっとその手の動きを見つめる。自ら腰を浮かせて、その行為を手助けさえした。
 神代の言った『ちゃんとした男の服』という言葉が、耳の奥にいつまでもとどまっている。
 あの白い靄の中に戻れればいいのに……と思う。
 ちょっと踏み出せば手の届く場所に、その入り口がありそうだという気もする。それなのに、さっきまで無意識のうちに身を浸していたその感触に、どうしてももどっていくことができない。
「佐竹代行がご執心なのも、無理はないな」
「え……?」
 神代が何を指して『無理はない』と言ったのかはよく分からなかった。佐竹代行というのは、多分あの男のことだろう。そういえば事務所でも、あの男にそんな風に呼びかける若いのがいたという気もする。
「何度か、佐竹代行から君のような子を譲り受けたことがあるんだよ。でも、ここまで手ひどくやられた子はいなかったね。たいていは、二、三日で飽きてしまったようだから」
 もう完全に服を脱がせたのに、神代の手はまだ義也の下腹にあった。まるで下生えの毛並みを確かめるように指が静かに動いている。
「あ……」
 義也は自分の唇が震え、ため息のようにそう声がもれでたことにどきりとした。
 思わず、ぎゅ……っと瞼を閉じる。
(な……んで……勃ってるんだよ、俺)
 それだけではなかった。義也は自分の体の奥に、とろりと熱い流れがあることも覚っていた。
 口にも、後孔にも、まだあの男たちの昂ぶりを押し込められていると錯覚しそうな圧迫感がある。胸の突起にも、やわやわと舌先で舐められたときそっくりの違和感がこびりついていた。荒っぽく扱われた痛みではなく、肌をざわめかせる感触だけが蘇ってくる。
 神代は、ただ下腹の茂みに触れているだけで、義也の牡に触れてさえいないのに……。
(あいつらとヤってたときも、俺……今と同じ顔、してたのかも。こんな顔であいつらを見上げてたのかも)
 そのことにかすかな衝撃を受ける。
 あの男たちの興奮を、自ら煽っていたなどとは考えたくなかった。
 おそらくは神代もあの男たちと同じことをするのだろう。あいつらより上手いかもしれない。気持ち良くさせてくれるのかも。そして神代のモノなら、口いっぱいに頬張って舌を使いたくなる……? ――自分がそんな期待をしているなんて、考えるのもおぞましい。
(神代も硬くしてる。ヤりたくて、うずうずしている)
 だが神代は無理強いしたりはしない。たとえそれがかすかな目配せであったとしても、義也が合図を送るのを待っているのだ。だから義也は顔を上げることができなかった。目が合えば、“抱いて”というサインだと思われてしまいそうだ。
(さっさと……ヤればいいじゃないか)
 焦れて、そう叫びたい気持ちをぐっと堪える。
(挿れて下さい……なんて、言えるわけない。そんなこと絶対言えない。だから……)
(どうとでも、好きなようにヤればいい……)




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UserTag: BL小説  18禁  須藤安寿 

03/26のツイートまとめ

anjusuto

@Arikawa_ アナゴ×マスオでお願いします(^O^)/。
03-26 21:40

カツオと豚足ー。 http://movapic.com/pic/201103262131124d8ddc905d653
03-26 21:31

きびなごー http://movapic.com/pic/201103262107154d8dd6f35ac2e
03-26 21:07

早く成長したいものwww>>>須藤安寿の育て方。1.羽毛布団が必要です 2.横に伸びるので広い場所が必要です 3.成長すると眉目秀麗な青年となります 気長に育ててみましょう。
03-26 19:40

クランプさんたち。 http://movapic.com/pic/201103261740264d8da67ad83f0
03-26 17:40

【製本機6】ともかくこれで、今までホチキスに頼っていた「綴じ」の工程を、平綴じにする準備は整った。私にうまく出来るかどうかは謎だけどw ……さて、余った開口部3センチのクランプ(4個)、どうしよう。クランプの使い道なんて、これまで一度だって考えたことなかったよ(^^;。(終わり)
03-26 17:33

【製本機5】そして二度私はショップ(くどいようだが100均)へと旅立った。新たに購入したのは開口部5センチの品。家に帰って試してみたところ、これならふたつでバチっと止まる(^^)/カンゲキ <4つ買っちゃったんだけどね(^^;。(続く)
03-26 17:28

【製本機4】クランプって私初めて買ったんですけど、これを購入する際には「開口部◯センチ」という注意書きをきちんと確認せねばならぬらしい。私が買ったクランプは開口部3センチ。板2枚を挟むといっぱいいっぱいで肝心の紙の束を挟むスペースがナイ!(SHOCK) (続く)
03-26 17:24

【製本機3】他にも製本のときに使う道具として、ヤスリ、小さいのこぎり、金属ブラシなどを購入。「これで全部揃ったわ(^^)。やっぱり100均て素敵?」とわくわくしながら帰宅。が、しかし……!(続く)
03-26 17:22

【製本機2】出かけた先は行きつけのショップ(←要するに100均)。工具売り場でクランプを発見。2個セットで100円。ちょっと小さめだったので、両側から挟めるように2セット購入。ふと視線をそらすと、ちょっとヤワそうだけどそれなりに手頃なサイズの板も売っていたのでこれも買う。(続く)
03-26 17:21

2 暗号筆記者

 午前二時、朝課の時間だった。
 時を告げる鐘の音を聞いたような気がして、私は反射的に飛び起きていた。
 土間に敷いた藁が背中をちくちくと刺している。その感触でアデルバーデンからザンクト・ホルスト修道院へ向かう旅の道中に、森に住む猟師の家の納屋に一夜の宿を借りたのだと、ようやく思い出す。
 鐘の音など、聞こえていたはずはなかった。

「感心だな。――若い修道士には、朝課は厄介な勤めだろうに……」

 目覚めたばかりで、まだぼんやりと闇を見つめている私にそう声がかけられた。同行者のジャン師の声だった。
 暗がりの中で、納屋の反対側の壁際に横になっていた師の表情まで伺い知ることはできなかったが、その声には笑いが潜んでいるようにも思えた。

「申し訳ありません、お起こししてしまって……」

「気にするな。私も、おまえ同様に朝課で目覚める癖がついているだけだ。長年の習慣だからな。もっとも、おまえくらいの年ごろには習慣が根付かずに苦労したものだが……」

 そう言って、師はまた笑みを漏らされた。修道士としてのたしなみか、それとも患った胸を庇っておられるのか、力ない小さな笑いだった。
 馬を使うことを特別に許されてはいたが、病を患っておられる老人の体には旅は過酷なものであるはずだ。だが師の張りのある声には、老いも、病も、睡魔の存在さえ、ほとんど感じ取ることができなかった。

「多分、私にはより多くの祈りが必要だから……」

 闇が肌に押し迫るような暗がりだった。私はその闇の中での会話に少しばかり臆していたのだが、ほとんど視力を失っておられる師には、それも気にならないのだろう。
 その暗がりの向こうで、ジャン師がごそりと体を起こす気配があった。

「まるで罪人の告白だな。何をそんなに恐れている? ――小さきジャン、物静かな弟よ。悩みがあるのならこの暗闇のなかで吐き出してしまうがいい」

 私のことを、師はいつもそう呼んでくださった。
 小さきジャン、と。
 そんな風に呼ばれるのは、私にとっては生まれて初めてのことだった。師と出会うまでの私は単に、ヤン、と呼ばれるか、あるいは、おい、と小突かれるように呼ばれるかのどちらかだった。どちらで呼ばれても……それほど大した違いはない。
 フランス式の発音で名を呼ばれることに馴染んでいるとは言い難かったが、私にそう呼びかけられるときの師の声には、真摯な人柄が表れているように思えて心地良かった。
 ありふれた名ではあったが、同名のよしみという気持ちを私に持っておられたのかもしれない。アデルバーデンでも、師は何くれと私に目をかけてくださった。

 暗号筆記者の存在を疎ましく思い始めた司教が私をお払い箱にしようと思い立ったとき、ジャン師が最後の仕事として『罪の書』の編纂を提案してくださなければ、私の帰還はもっと惨めなものになっていたに違いない。
 視力を失う以前にアデルバーデン大聖堂付属の修道院で文書の管理を勤められたジャン師は、ハレルヤの暗号の存在を知る数少ないひとりだった。暗号の筆記や解読については何もご存知ではなかったが、長く続いた伝統が司教の気まぐれで消えて行くことにひどく心を痛めておられたようだった。

 かくして私はジャン師とともにザンクト・ホルストに戻り、師の指導のもとで『罪の書』の筆記をハレルヤの暗号で行うことになったのだ。
 それがどんな内容なのかは、師は司教にさえ詳細を明かされなかった。修道院内部での同性愛に関わる異端の告発とその処罰についての手引きとなるもので、ジャン師の死によってその知識が失われることは避けねばならないが、内容が内容だけに容易に人目にさらされるような文書として残すわけにもいかない。そこで、ハレルヤの暗号で文書を残すこととしたい……そういう話であったようだ。
 ジャン師はアデルバーデン大聖堂付属修道院の写字室ではなく、その内容が外部に漏れる心配の少ないザンクト・ホルスト修道院の写字室で作業を進めてはどうかとも提案なさった。私が厄介払いをされてアデルバーデンから追放されるのではなく、司教づき暗号筆記者の役割を担ったままザンクト・ホルストに帰ることができるようにというお計らいだったのだろう。

「悩みなど……」

「ザンクト・ホルストはおまえが育った修道院だと聞いている。だが、そういう場所に帰るにしてはおまえはひどく心細気だ。これは、私の勘違いかな?」

「いいえ……たぶん、お気づきの通りです。私は、あのまま一生、アデルバーデンの大聖堂に筆記者として勤めるものと思っておりましたから……。暗号筆記者でなくなっても、ギリシャ語の翻訳の仕事ならさせていただけるのでは……と」

「アデルバーデンを離れることが、それほど名残惜しいというようには見えんな。まさか司教のヴァイスバッハが恋しいとでも? そうではなかろう、おまえはザンクト・ホルストに帰ることを恐れているのではないのか? いったいザンクト・ホルストに何があるというのだ」

「……」

 答えることはできなかった。
 ヴァイスバッハと私の関係を勘ぐる下卑た噂を、ジャン師もまた耳にされたのだろう。
 その恥辱に苦々しさが沸き上がってくる。
 万事に贅を凝らした優雅さを好むヴァイスバッハが、暗号を綴るより他に能のない一介の修道士など相手にするとも思えないが、その噂は、アデルバーデンでの私の生活にずっとつきまとっていたのだ。

「告白を強要したいわけではないのだ、小さきジャン。……言えぬのなら、もう眠るがいい。夜明けまでもう一眠りできるだろう」

 いたわるような声。
 師はそれきり私に声をかけようとはなさらなかったが、体を横たえる気配もまた感じ取ることはできなかった。
 私の告白を、待っておられたのかもしれない。
 アデルバーデンに行く以前にザンクト・ホルストで私が犯した罪。私の肌に棲む悪魔の半身と、サローの褐色の肌に棲む悪魔の半身とが、その断ち切り難い絆を確かめ合うように寄り添い、貪りあったあの一夜の罪の告白を……。



 余りにも多くの時間を、暗号とともにあり過ぎたせいかもしれない。
 私はしばしば、ごく当たり前のラテン語の文章を綴るときに、暗号を綴る時ほど言葉と文字との密接なつながりを実感することができずに戸惑うことがある。そして、平素の会話に使うドイツ語で自らの心の内を語るのは……さらに不得意だった。

 私は幼いころに両親を失ってザンクト・ホルスト修道院で育った。暗号の筆記は、ラテン語や初歩的なギリシア語と同様に修道院の写字室で習い覚えたものだ。
 その暗号は、最初期に使われた解読のキーワードにちなんで『Hallelujah(ハレルヤ・主をほめたたえよの意)』と呼ばれていた。
 暗号筆記の伝統は、アデルバーデンの北に位置する小麦畑と葡萄園を含む領地や、かつては砦としても使われたことのある堅牢な建造物とともに、ザンクト・ホルスト修道院にもたらされたものだ。
 十字軍の時代、そこには華やかな修道騎士団の本部が置かれ、聖地巡礼の警護を行なうために貴族の子弟が集まっていたのだという。暗号筆記の伝統を作り出したのはその修道騎士たちであったらしい。詳しい経緯を耳にしたことはないが、おそらくは遠隔地に赴任した仲間と秘密裡に連絡を取り合うために必要とされたものだったのだろう。
 ザンクト・ホルスト修道院は清貧と労働を重んじる峻厳な会則を持つベネディクト派の修道会で、先に述べた修道騎士団とは、その成立の経緯も、目指すべき理想もまったく違っていたが、ハレルヤの暗号は百二十年のあいだ失われることなく守り続けられてきたのだ。

 ――私はおそらくその最後の筆記者となる。

 ザンクト・ホルスト修道院には十分の一税に加えて、司教が修道院の敷地内にある森で無制限に狩りを行うことを容認し、修道院で製造されるワインの収益の五分の一を司教に献じること、そしてアデルバーデンの大聖堂への暗号筆記者の派遣とその育成を行うことが義務付けられていた。
 修道騎士団の解散後、無人のまま司教の管理下に置かれた領地と建造物とを譲渡する条件としては、司教にとっても修道会にとっても悪くない取引だっただろう。すでに実用の機会などないに等しいハレルヤの暗号が、失われることなくザンクト・ホルストで受け継がれてきたのは、そうした背景を持ってのことだった。



 私はアデルバーデンの司教であるヴァイスバッハのもとで、大聖堂づきの暗号筆記係修道僧として十八歳から二十二歳までの四年間を過ごしていた。それは私の本来の役割であった暗号筆記者としても、司教づきの口述筆記者・写字生という表向きの役職から考えても、ありえないほどの若さだった。
 大聖堂を訪れる裕福な商人の娘たちをことあるごとに自室に引き入れているヴァイスバッハが、それだけでは飽き足らずに若い修道士の尻を可愛がっているという噂が立つには、充分すぎるほどに奇異な状況だったのだろう。

「司教様がお呼びです。ハレルヤを綴るように……と」

 私が大聖堂付属修道院の写字室で仕事(たいていはギリシャ語の文献をラテン語に翻訳する仕事だった)をしていると、ヴァイスバッハの小姓が私にそう命じる。
 十日に一度くらいの割合で、私はそんな風に司教に呼び出されていた。何らかの文書を暗号で綴れという意味で、暗号やその筆記者が、決してその存在を明らかにしないための符丁だった。
 それは、傍で聞いている者には、情事をほのめかす誘いの言葉と思えるものだったのかもしれない。
 多くの場合、大聖堂への派遣を命じられるのは年配の筆記者だった。
 司教のもとで暗号の文書を作成するとなれば、その内容は概ね、世間に広まったり、人に聞かれることを避けねばならぬ重要な秘密であったからだ。暗号の扱い熟練していなければならなかったし、死期の見えた老人に筆記を任せれば秘密が外に漏れることを心配する時間は短くて済む。
 だが、私の前任者であった筆記者(私に暗号の筆記を教えたのもこの人物だ)が老衰のためにアデルバーデンで亡くなったとき、ザンクト・ホルスト修道院には、もう私以外に暗号筆記者は残ってはいなかった。誓願から数年にしかならないひょっこの私がアデルバーデンの大聖堂に派遣されたのは、そういう理由だった。



 かつては三十名もの写字生と十八名の絵師を抱えていたことがあるというザンクト・ホルスト修道院の写本工房も、もはや見る影もなく衰退しきっていた。
 写本製作の仕事はすでに市井の写本工房で行われることが常となり、修道院に仕事を依頼する者は少なくなっていた。修道院の主要な収入はとうの昔に葡萄園の収穫にとって代わられ、細々と続けられていた写本製作は、暗号筆記者を育成するための目くらましに過ぎぬものに成り果てていたのだ。
 四年前、私が己の罪から逃げるようにアデルバーデンに旅立った時、ザンクト・ホルストの写字室に残ったのは絵師のサローただひとりだった。

(サローは今も、その写字室で聖書の挿絵を描き続けているのだろうか……)

 ぼんやりと眠りに落ちて行きながら、私はそんなことを考えていた。
 アデルバーデンで過ごした四年間の間に、ザンクト・ホルストからは手紙の一通さえ届かず、辺鄙な修道院の噂は何も聞こえてはこなかった。が、それでも、サローが死にでもしない限り、あの写字室から解放されることはないのだろうと思えた。
 修道院長は決してサローを手放すまい。
 サローの描く美しい絵は、衰退しきったザンクト・ホルスト修道院の写本工房が注文をつなぎとめる最後の頼みの綱なのだから。
 褐色の肌をした形ばかりの改宗者であったサローが、何年も礼拝にも出ず、告解もせずに修道士としてザンクト・ホルストに置かれていたのは……そのためだった。
 私はサローのことを想い、サローの描いた聖母マリアの姿を想い、そして、数少ない手回り品をまとめた荷物の中に忍ばせた松ぼっくりのことを想った。鼻腔にかすかにサローの匂いが蘇ってくるのを感じたようにさえ思う。
 四年前にアデルバーデンに向かう旅の途中、私は森の中で野宿をするときにはいつもお守りのようにその松ぼっくりを抱いていた。アデルバーデンの大聖堂付属修道院の僧房でも、そうして眠ったことがいくどもある。
 サローから、そして己の罪から逃れるようにザンクト・ホルストをあとにした私だったが、結局のところ何を振り捨てることもできず、逃げきることもできなかったのだという気がする。
 ザンクト・ホルストに帰ることをこんなにも恐れているのは……そのせいだ。
 間近にジャン師のいる今、荷物を探って松ぼっくりを取り出そうなどという気持ちにはならなかったが、私はその感触がたまらなく恋しかった。




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3 無原罪の御宿り

 ジャン師の気配を振り払うことはできなかった。何も見えぬ闇の中で、何も見えぬはずのジャン師のまなざしがずっと私に注がれていたような気がする。
 夜明けまでの短い時間、浅い眠りを漂いながら私は切れ切れに夢を見ていた。
 松ぼっくりを抱いて眠るときにはいつも決まって同じ夢を見たものだが、あの時、アデルバーデンからザンクト・ホルストにもどる旅の途中では、胸に抱いている松ぼっくりの感触もまた夢の一部だった。
 夢の中で、私が見つめていたのは聖母マリアの御姿だった。
 サローが描いた受胎告知の挿し絵。
 まだ少女であった聖母の姿だ。
 柔らかそうな頬にサローの指先が繊細に刺した白に溶けゆく薄桃の色。華奢な肩を包む衣を彩る青金石の濃淡。華奢な肩に落ちる髪の房の金。大天使ガブリエルに見守られて、聖母マリアは授かった光を大切な宝物のように手のひらに押し包んで胸に抱いていた。
 私の記憶を総浚えしてみても、あの絵を越える美しい色彩を探し出すことはかなわない。
 聖母マリアはまぎれもない少女の姿として描かれていたが、その絵を一目見た瞬間から、私はそれが私の姿なのだと悟っていた。

 それは、僕……なんでしょう、サロー?

 あのころ、私まだほんの子どもだったが、己の容姿に自惚れる罪深さは知っていた。だから、実際にはその言葉を口にすることはできず、ただ夢の中でだけそうサローに問いかけていただけだ。
 繰り返し、繰り返し……その答えを得たいと願いながら。

(あれは、サローのくれた松ぼっくりを抱きしめた私の姿だ)

 夢の中でさえ明確な答えを得たことはないが、私は今もそれを疑っていない。
 私は描かれた聖母のように長くしなやかな髪は持っていなかったし、身につけていたのは目の粗い陰鬱な色合いのすり切れた僧衣だった。サローのくれた松ぼっくりは聖母の授かった恩寵のような眩しい光を放ってはいなかったけれど……。
 けれど、あの受胎告知の挿絵を描いていたときのサローのまなざしは、確かに私に注がれたまなざしと同じものだった。



「森で拾った」

 まるで押し付けるような強引さで松ぼっくりを差し出したとき、サローはぶっきらぼうにそう言っただけだった。
 ――私は九歳の子どもだった。
 ザンクト・ホルスト修道院では、まだ幼すぎて葡萄園での労働には使えない子どもたちは人数の足りない写字室の席を埋めるための頭数と見なされていた。サローほどの差別にさらされていたわけではなかったが、がつがつと飯を食らうばかりで役立たずの子どもたちは修道院が抱え込んだ厄介なお荷物だったのだ。
 そのころの私は、木枠に蝋を流し込んだ写字板を渡され、刻んだ文字が見えなくなる夕暮れまでラテン語と暗号の筆記を仕込まれ続けていた。
 十歳になるまでに使い物にならなければ、葡萄園に送られて農奴として使われることになっていた。私より年長の子どもたちは全員、そうして十歳になると写字室から姿を消し、私が最後に残ったひとりだった。

「くれるの?」

 私はまず松ぼっくりを見つめ、それからおずおずとサローを見上げて、そう尋ねた。
 ああ、とサローは小さく頷いて私を見下ろし、いつも険しい表情をそのときだけはかすかに緩めた。それはおそらく、私が染みるような喜びに震えていることを見抜いたからだったのだろう。
 それは私が手にした、たったひとつの玩具だった。
 森に入れば松ぼっくりなど珍しいものではないのかもしれない。だが、それさえも、それまでには与えられたことはなく、私は自分が何かを所有することがあるなどとは考えたことさえなかった。

「花のようだね。木で作った花……」

 私は手のひらの中の松ぼっくりに再び視線を落としてそうつぶやいた。
 サローの拾ってきた松ぼっくりは子どもの手には余るほどの大きさで、花びらのように重なりあう笠はどれひとつとして欠けてはいなかった。
 それは黄金のように価値のあるものだと私には感じられた。
 森には無数の松ぼっくりが落ちているだろうが、これほど美しいものは決してないだろう。挿絵に使う顔料とするための草花を求めてたびたび森に入っていたサローが、その無数の松ぼっくりの中からもっとも美しいひとつを持ち帰り、私に贈ってくれたのだ。
 そのことが、たまらなく誇らしかった。

「俺にとっては、花は……おまえだ、ヤン」

 小さくサローがそうつぶやいた。
 その言葉の意味が分からずに顔を上げたとき、サローの手がふわりと動いて私を包み、ぎゅっと強く抱きしめられていた。

「……」

 驚きのあまり、声も出なかった。
 それは明らかに見習い修道士に相応しい行為ではないのだと分かっていたが、私はしばし我を忘れてその心地よさに酔った。幼児のころに父母を失って修道院で育った私にとって、それは初めて知る人肌のぬくもりだった。
 峻厳な修道士たちの生活では手を触れあうことさえ性愛の行為として扱われ、禁忌に等しかった。性愛の意味など当時の私は何も理解してはいなかったが、淡く身を疼かせる震えにまったく無知であったわけではない。
 サローが見下ろしているのだと気付いていたが、私は顔をあげることが出来なかった。そうしてまなざしを注がれることにさえ、私は不馴れだった。そのまなざしにくすぐったいほどの羞恥を感じながら、私はただじっと、その抱擁に身を預けていた。
 サローの胸の奥で脈打つ、少し早い鼓動を感じ取りながら、もう二度と、サローが森で松ぼっくりを見つけることがありませんようにと祈っていた。
 私以外の誰かにサローが松ぼっくりを渡すことがありませんように……。

 サローが受胎告知の挿絵を描いたのは、それから数カ月あとのことだった。
 私は葡萄園に送られることなく十歳になり、暗号筆記者となるべく本格的な教育を受け始めていた。
 ザンクト・ホルストにはたった一枚の鏡さえなく、私は自分の姿を知らなかった。
 だから私はあの絵に描かれた聖母マリアの姿を通して、初めて自らを知ったのだった。サローの褐色の肌とは違う、自分の肌の色を。いつも短く刈り込まれて視界に入ることのなかった自分の髪の色。そして、聖母マリアの衣と同じ青金石の目の色も……。

 そしてサローがあの日から惜しみなく私に注ぎ続けたまなざしに潜む、愛の存在を知った。



 あの絵を描いたとき、サローはまだ十六歳の見習い修道士に過ぎなかった。
 褐色の肌をした見習い修道士は明らかに異質であり、修道院の中でもひときわ目障りで厄介な存在として疎んじられていたが、その才能はすでにザンクト・ホルストの輝かしい財産として修道院長の寵愛のもとにあった。

「写本絵師サローに限っては誓願後も聖務日課を特別に免除するものとする」

 修道院長の〈温情溢れる〉その言葉によって、サローは修道士としてザンクト・ホルストにありながら野性の獣のように放置され、修道士としてあるべき全ての秩序から締め出されることになった。
 サローがその才能をもって充分に神に奉仕するための措置だ。
 修道院長は平素以上に威厳溢れる表情でそう語った。
 院長によれば、異邦人であり、異教徒でもあった母親を持つサローは、その生まれからすでに一歩劣った存在であり、神の御許に近づくためには並みの修道士以上の働きをせねばならないのだという。
 サローの姿が視界に入ることを避けたいと望みながら、サローの才能を修道院の収益に結びつけたいという欲もまた棄てきれず、その相反するふたつの思いの間で板挟みになった院長はその口実を幾晩も考え抜いたに違いなかった。
 なぜサローがその状況に甘んじたのかは、あのころの私には分からなかった。
 誓願して正式な修道士となれば、サローは修道院長の要求する白い肌、金色の髪のイエス・キリストや聖母を描くことを死ぬまで強いられることになる。誇り高いサローにとって、ただ餓えぬ程度に与えられる食事と引き換えに選び取れる道ではなかったはずだ。
 修道院の誰もが誓願を迫られればサローは立ち去るだろうと考えていたし、私もまたそれを予感し、何より恐れていた。

 私は……サローを失いたくなかった。




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